亜硝酸リチウム LiNO2
劣化したコンクリートの補修に利用される。亜硝酸イオンは2価の鉄イオンと反応し、鉄イオンの溶出を防ぐ。また、鉄の表面にFe2O3の不動態被膜を形成する(2Fe2+ + 2OH- + 2NO2- → 2NO + Fe2O3 + H2O)。そのため、鉄筋の腐食反応を抑えることができる。
リチウムイオンはその大きさが小さいため浸透しやすい。また、ナトリウムイオンやカルシウムイオンのシリカ鉱物との反応生成物は水分を吸収して膨張してしまうのに対し、リチウムイオンの場合は水分を吸収しないため膨張しないという利点がある。
塩化リチウム LiCl
吸湿性、潮解性。水に易溶、エタノール、アセトンに可溶。溶融塩電解により単体のリチウムを得ることができる。ウニ胚を塩化リチウム溶液で処理すると、植物極化によって外原腸胚が形成される。
酸化リチウム Li2O
炭酸リチウム Li2CO3や水酸化リチウム LiOHを減圧下で加熱すると得られる。塩基性酸化物。空気中の水分や二酸化炭素を吸収する。水と反応すると水酸化リチウムになる。また、ガラスや金属と高温で反応し、これらを腐食する。セラミックスなどの用途がある。
水酸化リチウム LiOH
水に易溶、エタノールに難溶。水溶液は強塩基性を示す。電気自動車用バッテリーなどに利用される。
水素化リチウム LiH
常温でガラス状無色透明の固体。光に当たると急速に灰色になる。リチウムは高温で水素と化合し、水素化リチウムとなる。湿った空気に触れると自然発火する恐れがある。水と激しく反応し、水素を発生する(LiH + H2O → LiOH + H2)。非常に強い還元剤。850℃で分解。塩化アルミニウム AlCl3と化合して、水素化アルミニウムリチウム LiAlH4になる(4LiH + AlCl3 → LiAlH4 + 3LiCl)。この水素化アルミニウムリチウムは室温、乾燥空気中では安定。125℃以上で分解する。また、水と激しく反応し、水素を発生する。有機化合物の還元剤や水素添加、水素化合物の合成などに利用される。
炭酸リチウム Li2CO3
水に難溶、エタノールに不溶。潮解性。硫酸リチウム Li2SO4と炭酸ナトリウム Na2CO3から生成する。躁うつ病の薬剤やリチウム塩の製造原料、陶磁器の釉薬として利用される。
窒化リチウム Li₃N
融点845℃。金属リチウムは常温でも窒素と反応して窒化リチウムを生じる。リチウムの窒化に関しては、水や水素を添加した窒素ガス中での熱窒化などの研究が行われている。また、窒化ガリウムの製造での利用も研究されている。
リチウムイオン内包フラーレン Li+@C60
リチウムイオン内包フラーレンはその名前の通り、リチウムイオンがフラーレンの中に閉じ込められた構造をしている。[Li@C60](SbCl6)や[Li@C60](PF6)などの形で単離される。[Li+@C60]のLi+はC60と化学結合をもたない。また、内包されたLi+はC60分子内を比較的自由に移動することができ、C60の外部のイオンと静電気的な作用を引き起こす。リチウムイオン内包フラーレンを有機半導体に混ぜることで、ペロブスカイト太陽電池の耐久性が従来のものの10倍となるなどの研究結果もある。
有機リチウム化合物
有機リチウムの反応性はグリニャール試薬によく似ているが、より反応性は高く、利用価値は高いと言える。有機リチウム化合物は通常、ヘキサンやベンゼン中で製造される。製造方法には金属-水素交換反応や金属-ハロゲン交換反応、金属-金属交換反応などがある。
金属-水素交換反応は、化合物中の十分酸性度の高い水素をブチルリチウムなどのリチウム試薬も用いてリチオ化(リチウムに置換)する反応である。この方法はホスフィドやアミド化合物を合成する際に利用されることが多い。
金属-ハロゲン交換反応は、有機ハロゲン化物と金属リチウムとの反応である。市販されている有機リチウム化合物の多くはこの方法で作られる。
金属-金属交換反応は、有機水銀化合物などで金属をリチウムと交換する。この方法は上記2つの反応に比べてあまり利用されないが、リチウム塩が生じないという利点がある。