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ランタノイド収縮(lanthanoid contraction )

ランタノイド収縮とは

ランタノイド収縮とはランタノイドにおいて、原子番号の増加とともにイオン半径、あるいは原子半径が減少していくという現象である。この結果、原子番号の間にランタノイドを含むモリブデンとタングステンの原子半径はほぼ同じになる(Moは140pm,Wは141pm)。

 

ランタノイドでは原子番号が大きくなるにしたがって4f軌道が電子で満たされていく。4f軌道で増加する電子は核電荷を十分に遮蔽できないため、最外殻電子の受ける有効核電荷が増加する。その結果、最外殻電子が強く核に引き付けられるようになり、収縮していくのである。また、この現象にはわずかながらも電子の相対論的な効果も含まれる。s軌道やp軌道の電子が原子核に近づくと大きく加速し、質量が増加する。そして軌道半径が収縮するのである。この影響は軽元素では無視できるほど小さいが、重元素では20%もの収縮が観測される。

 

ランタノイド収縮と同様の現象は、アクチノイドやScからZnにかけての元素にも見られる。これらの現象はそれぞれアクチノイド収縮、スカンジノイド収縮と呼ばれることもある。アクチノイド収縮では5f軌道の不完全な遮蔽が原因となっており、収縮には電子の相対論的な効果も十分に関与している。スカンジノイド収縮では、3d軌道の不完全な遮蔽が原因となっている。これによって、ケイ素とゲルマニウムの原子半径が近い値をとることが説明できる(Siは117pm,Geは122pm)。