熱電発電とは
2種類の異なる金属または半導体の両端を接合し、2つの接合部に温度差を与えることで起電力を得ることを熱電発電という。ゼーベック効果を利用している。温度差発電ともよばれる。熱電変換素子を組み合わせて実用化されている。可動部がないため騒音や振動がない、長寿命、小型軽量、二酸化炭素などの排出がなく環境にやさしい、変換効率が排熱量にに依存せず一定、といった利点がある。シリコンゲルマニウム素子を用いた人工衛星用SNAP10AはVoyager1号、2号の電源として利用されている。5℃の温度差で1cm²あたり12μWの電力を得るという技術も開発されており、体温と大気などの小さな温度差で発電できる。今後センサーやウェアラブル端末への利用が期待されている。
熱電発電素子
ゼーベック効果、ペルチェ効果、トムソン効果などを利用して熱エネルギーと電気エネルギーの変換を行う素子を熱電変換素子という。熱電素子の一種。
ゼーベック効果(seebeck effect)
2種類の導体の両端をつないで閉回路を作り、その両端に温度差を与えると、回路に起電力が生じて電流が流れる。この現象をゼーベック効果という。1821年にドイツのT. J. Seebeckが銅とビスマスについて発見した。温度差ΔTが十分に小さいときには電位差VはΔTに比例し、V=αΔTと表される。ここでαはゼーベック係数と呼ばれ、この値が大きいほど大きい起電力が得られる。
ペルチェ効果(Peltier effect)
2種類の異なる導体を接合し電流を流すと、ジュール熱とは異なる発熱または吸熱が起こる。この現象をペルチェ効果という。1834年にフランスのJ. C. A. Peltierが発見した。発生する熱はジュール熱とは異なり可逆的で、電流の向きを変えれば発熱と吸熱が入れ替わる。接合部での単位時間あたりの発熱量Qは電流Ⅰに比例し、Q=ΠⅠである。ここでΠはペルチェ係数と呼ばれ、正にも負にもなる。
トムソン効果(Thomson effect)
温度差のある1つの導体に電流を流すと、ジュール熱とは異なる発熱または吸熱が起こる。この現象をトムソン効果という。1851年W. Thomson(後のケルビン卿)によって発見された。電流の向きまたは温度勾配の向きを逆にすると、発熱と吸熱が入れ替わる。導体内部の温度勾配ΔT,流れる電流Ⅰ,ある部分における単位時間当たりの発熱量ΔQの間には、ΔQ=ΘⅠΔTという関係がある。ここで、Θはトムソン係数と呼ばれ、正にも負にもなる。