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鉛 Pb

鉛(lead)

原子番号 82   原子量 207.2

m.p. 327.5℃   b.p. 1740℃

密度 11.35(g/cm3)

 

単体は銀灰色の金属。両性元素。空気中では表面に酸化被膜を生じ、内部が保護される。天然には方鉛鉱PbS、白鉛鉱PbCO3などとして産出する。古くから知られた元素のひとつで、元素記号はラテン語で「鉛」という意味の"plumbum"から来ている。日本でも古くから知られており、青金(あおがね)ともよばれた。また、白粉(おしろい)として用いられた。「なまり」という呼び名は、やわらかく加工しやすい「生り」から来ている。

 

スズとの合金がはんだであり、混合比によってはその融点を183℃まで下げることができる。鉛は密度が大きく、放射線の吸収能力が高いため、放射線遮蔽材としても利用される。また、鉛蓄電池としての利用も多い。鉛は加工しやすく古くから幅広い用途で利用されたが、毒性があるため代替品の研究などが行われている。

 

 

鉛ガラス(lead glass)

酸化鉛(Ⅱ)PbOを含有するガラス。鉛を添加することで、ガラスの透明度と屈折率、密度が高くなる。軟質で加工性がよく、電気絶縁性にも優れる。電気絶縁性を利用して電球や電子管などの管球用ガラスに、屈折率の高さから光学ガラス(フリントガラス)、クリスタルガラスなどで利用される。また、放射線遮断ガラスとしても用いられる。

 

鉛蓄電池(lead storage battery)

代表的な二次電池で、1859年にR. Plantéが考案し、その後改良が重ねられた。正極活物質はPbO2、負極活物質はPb、電解液は希硫酸(比重1.21~1.30)である。放電時の反応は以下のようである。

 

負極 : Pb+SO42-→PbSO4+2e-

正極 : PbO2+4H++2e-+SO42-→PbSO4+2H2O

全体 : PbO2+Pb+2H2SO4→2PbSO4+2H2O

 

充電時には放電時の反応と逆の反応が起こる。放電が進むと、正極のPbO2、負極のPbはともにPbSO4に変化し、電解液の硫酸濃度が小さくなり起電力が低下する。鉛の入手は容易であり、安価に生産できる。また、起電力が約2.1Vと大きく、多数回の放充電が繰り返せるといった利点がある。一方で、重くて大型といった欠点がある。自動車のバッテリー、非常用電源などに幅広く利用される。