レニウム(rhenium)
原子番号 75 原子量 186.207
m.p. 3180℃ b.p. 5596℃
密度 21.02(g/cm3)
単体は銀白色の金属。メンデレーエフの周期表ではドビマンガンとしてその存在が予想されていた。天然に安定同位体が存在する元素の中では最後に発見された元素である。1925年にドイツの化学者W. Noddack、I. Tacke、O. Bergの三人が、コルンブ石を化学処理して得た試料でX線分光分析を行い、発見した。1929年にはNoddack夫妻が金属レニウムを分離している。元素名はライン川のラテン語名"Rhenus"にちなんで命名された。1906年には小川正孝がこの元素を発見していたが、誤って43番元素として発表していた。彼はニッポニウムと命名していたが、追試での存在確認も失敗に終わり幻の元素になってしまった。
1000℃以上では酸素と反応し、黄色の酸化レニウム(Ⅶ)Re2O7となる。フッ素、塩素、臭素とも300℃以上で反応する。酸化数は+1~+7をとるが、+4、+7が安定である。産出量は非常に少ないが、輝水鉛鉱としてわずかに産出。レニウムの単独鉱物はないと考えられていたが、北方領土の択捉島茂世路岳で初めてレニウム鉱物であるレニウム鉱(ReS2)が発見され、1994年には科学雑誌Natureに掲載された。フッ化水素酸や塩酸には不溶だが、硝酸や硫酸に可溶。金属単体における融点ではタングステンに次いで高い。また、熱伝導度が大きく、熱電子放出能も大きい。高真空電子管材料やフィラメント、宇宙航空用材料、熱電対、ペン先、水素化触媒などで利用される。