バリウム(Barium)
原子番号 56 原子量 137.327
m.p. 729℃ b.p. 1637℃
密度 3.594(g/cm3)
単体は銀白色のやわらかい金属。アルカリ土類金属。バリウムを含む鉱石は17世紀から知られていたが、金属単体が得られたのは1808年である。イギリスの化学者H. Davyが電気分解によりバリウムを単離した。元素名はギリシア語で「重い」という意味の"barys"にちなむ。
化学的性質はカルシウムやストロンチウムに似るが、反応性はより大きい。空気中では表面が酸化され、熱すると酸化バリウムを生じる。ハロゲンとは常温で反応、水素とは高温で反応する。水とは激しく反応し、水素を発生する。石油中に保存する。酸化数は+2が安定。硫酸バリウム以外のバリウム化合物の多くは毒性が強い。炎色反応は黄緑色。天然には毒重石BaCO3や重晶石BaSO4として産出。金属の脱酸素剤や合金材料、X線造影剤、コンデンサー、電圧材料などに利用される。
硫酸バリウム BaSO4
無色の固体。融点1580℃。天然には重晶石として産出する。化学的に安定で、水やエタノールにはほとんど溶けない。希酸にも難溶だが、濃硫酸には溶ける。空気や熱に対しても安定。X線の吸収能が大きい。水や胃液、腸液に溶けにくく、消化管から吸収されないため、X線造影剤として利用される。硫酸バリウムは無毒だが、亜硫酸バリウムBaSO3や硫化バリウムBaSは有毒であり、混同しないように注意が必要である。白色顔料としても用いられ、硫化亜鉛と混合したものをリトポンという。この他にゴムの充填剤や紙の表面処理剤などでも利用される。
チタン酸バリウム BaTiO3
チタン酸バリウムは、酸化バリウムBaOと酸化チタン(Ⅳ)TiO2からなる化合物で、数種類存在する。一般には1:1の化合物BaTiO3を指す。無色の固体。融点1610℃。酸やアルカリに侵されにくい。温度によって5つの晶系を可逆的に転移する。キュリー温度は120℃であり、これ以下では強誘電体となる。誘電率の大きさを活かして小型で大容量の磁気コンデンサーとして利用される。また、圧電性を示すため、音響機器などの電圧素子としても利用される。白色顔料として利用されることもある。