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ナトリウム Na

ナトリウム(sodium)

原子番号 11   原子量 22.989770

m.p. 97.81℃   b.p. 883℃

密度 0.971(g/cm3)

 

単体は銀白色のやわらかい金属。アルカリ金属。化合物としては古くから知られていたが、単体金属は1807年にイギリスの化学者H. Davyが水酸化ナトリウムNaOHの融解電解を行うことで得られた。"sodium"という名称はアラビア語で「頭痛」を意味する"suda"に由来する。頭痛薬として炭酸ナトリウムが利用されていたことからこの名称が用いられたとされる。また、"Natrium"という名称はラテン語で「ソーダ(炭酸ナトリウム)」を表す"natron"に由来する。元素記号のNaもここから来ている。

 

空気中で酸化され、水とも反応するため、石油中に保存する。ハロゲンと反応し、ハロゲン化物となる。乾燥空気中で熱すると主に過酸化ナトリウムNa2O2を生じる。高温では水素とも反応する。アルコールとも反応する。ナトリウム塩は水に可溶なものが多い。天然には岩塩NaClやケイ酸塩として産出する。安定同位体は23Naのみ。また、海水中には塩化ナトリウムとして多量に存在する。炎色反応は黄色である。

 

生体必須元素であり、生体では細胞外液中に多く含まれる。浸透圧調整やpH調整に重要な役割を果たす。食塩、ナトリウムランプ、原子炉用冷却材、還元剤に用いられる。この他にも、ナトリウム化合物は医薬品をはじめとする多くの化学工業で用いられる。

 

 

塩化ナトリウム NaCl

無色の固体。融点801℃、沸点1413℃。比重2.18。水100gに溶ける量は、0℃で35.6g、20℃で35.8g、100℃で39.1gであり、温度による溶解度の差は小さい。海水には2.8%程度含まれる。水によく溶けるが、アルコールには溶けにくい。純粋なものは潮解性を示さないが、不純物としてマグネシウムやカルシウムの塩などを含むと潮解性を示す。天然には岩塩として産出する。水酸化ナトリウムやナトリウム、塩素、塩酸などを製造する原料として重要。食塩の主成分である。調味料の製造や食品貯蔵用に広く用いられる。0.9%食塩水は生理食塩水として利用される。陶磁器の釉薬や塩析材料などでの利用もある。大きな単結晶は赤外線分光器のプリズムとして利用されることもある。

 

過酸化ナトリウム Na2O2

淡黄色の固体。NaとO22-からなる。融点640℃。強い還元剤。常温では水と激しく反応して酸素と水酸化ナトリウムを生じる。冷水では過酸化水素と水酸化ナトリウムを生じる。有機物と混合すると発火または爆発する。漂白剤や二酸化炭素の吸収剤として利用される。

 

次亜塩素酸ナトリウム NaClO

黄緑色の固体。無水物は極めて不安定で爆発しやすい。水酸化ナトリウム水溶液に塩素を通じると得られる。水溶液中の次亜塩素酸イオンは比較的安定。酸と混ざると有毒な塩素が発生する。漂白剤や殺菌剤として利用される。

 

水酸化ナトリウム NaOH

無色の固体。融点318℃、沸点1390℃。比重2.13。苛性ソーダとも呼ばれる。潮解性。水によく溶けて強塩基性を示す。水への溶解熱は44.51kJ/mol。二酸化炭素と反応して炭酸ナトリウムを生じる。腐食性が強いため、皮膚に直接触れないように注意が必要。食塩水の電気分解によって得る。石鹸や染料、レーヨン、セロハン、紙などの製造、石油精製などで利用される。

 

水素化ナトリウム NaH

灰色の固体で、NaとHからなる塩化ナトリウム型構造を持つ。約800℃で分解し、ナトリウムと水素を生じる。水とは爆発的に反応し、水素と水酸化ナトリウムを生じる。脱水剤や水素発生剤、強力な還元剤として利用される。

 

炭酸水素ナトリウム NaHCO3

無色の固体。比重2.20。重炭酸ソーダ、重炭酸ナトリウム、重曹などとも呼ばれる。熱すると270℃以上で分解し、炭酸ナトリウムに変わる。25℃では水100gに10.3g溶ける。水溶液は弱塩基性を示す。ベーキングパウダーや医薬品(胃酸の中和)、消火剤、洗剤などに利用される。

 

炭酸ナトリウム Na2CO3

白色の固体。融点852℃。比重2.53。炭酸ソーダ、ソーダなどとも呼ばれる。無水物、一水和物、七水和物、十水和物がある。無水塩はソーダ灰、十水和物は洗濯ソーダと呼ばれることもある。安定で、熱しても分解しない。25℃では水100gに29.4g溶ける。水溶液は強塩基性を示す。十水和物は風解性の結晶で、空気中で水を失い一水和物となる。工業的にはアンモニアソーダ法により製造される。ガラスや石鹸の製造、洗濯用洗剤や医薬品などとして利用される。