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ヒ素 As

ヒ素(arsenic)

原子番号 33   原子量 74.92160

m.p. 817℃(灰色,36気圧)

b.p. 616℃(灰色,昇華)

密度 5.78(g/cm3)(灰色)

 

漢字では砒素と表記される。単体には常温で最も安定な灰色ヒ素(金属ヒ素)の他、黄色ヒ素、黒色ヒ素の3つの同素体が存在する。これらの同素体はいずれも固体であるが、灰色ヒ素には昇華性がある。古くから存在は知られていたが、単体が遊離されたのは13世紀。Albertus Magnusが単離したとされている。ヒ素の硫化物As2S3は古くから黄色の顔料として用いられてきた。そのため、元素名はギリシア語でこの顔料を表す"arsenicon"からきている。

 

天然には雄黄As2S3や鶏冠石As4S4、硫ヒ鉄鉱FeAsSなどとして産出する。安定同位体は75Asのみ。空気中では安定。酸化数は-3、+3、+5をとることが多い。化学的性質はリンに似る。ヒジキなどに多く含まれる。ヒ素の化合物には毒性の強いものが多い。銅や鉛に加え、耐熱性や硬度を増加させる。ガリウムやインジウムとの化合物は半導体として利用される。トリセノックス(三酸化二ヒ素)は急性前骨髄性白血病の治療薬として使われる。

 

ヒ素はその毒性から毒殺などに用いられる。中でも亜ヒ酸H3AsO3(致死量は100~300mgとされる)は毒性がよく知られ、1998年7月に起こった和歌山毒物カレー事件でも使われた。また、1955年の森永ヒ素ミルク中毒事件では粉ミルクにヒ素が混入、1万人以上の乳児が中毒になり、130人以上の死亡者がでた。