リン(phosphorus)
原子番号 15 原子量 30.973761
m.p. 44.2℃ b.p. 280℃
密度 1.82(g/cm3)(白リン)
漢字では燐と表記される。白リン、紫リン、黒リンなどの同素体が存在する。黄リンは白リンの表面に膜状の赤リンがついたものと考えられている。また、赤リンは白リンと紫リンの固溶体と考えられている。1669年、ドイツのH. Brandが人尿から分離した。生体から発見された唯一の元素。黄リンが暗所で発光することから、ギリシア語で「光」を表す"phos"と「運ぶもの」を意味する"phoros"を組み合わせて命名された。天然にはリン灰石Ca5F(PO4)3などとして産出する。安定同位体は31Pのみ。酸化数は-3、+3、+5をとることが多い。生体必須元素で、DNAなどの遺伝物質に含まれる。また、歯や骨の主成分ヒドロキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2を構成する元素でもある。肥料の三要素の一つでもあり、農薬などにも用いられる。
黄リンは淡黄色のろう状固体で、正四面体型分子のP4からなる。ニンニク臭。発火点は34℃で、空気中で自然発火する。暗所では青白い光を放つ。猛毒。水に不溶、ベンゼンや二硫化炭素に溶ける。水中に保存する。白リンも同じ性質をもつ。
赤リンは赤褐色の粉末状固体。無定形。無臭。密度2.20(g/cm3)、融点589.5℃(43.1気圧)、416℃で昇華。発火点は260℃。紫リンと白リンの固溶体と考えられている。空気中で安定。毒性はない。二硫化炭素に不溶。空気を遮断して黄リンを加熱すると得られる。マッチの側薬や花火の原料となる。
紫リンは暗赤紫色の固体。α金属リンとも呼ばれる。密度2.35(g/cm3)。416℃で昇華。白リンをビスマスと封管中で加熱すると生成する。各種溶媒に不溶。毒性はない。
黒リンは金属光沢のある鉄灰色の固体。層状構造をもつ。β金属リンとも呼ばれる。無臭。最も安定な同素体。密度2.69(g/cm3)。融点587℃。熱の良導体、電気の半導体。黄リンを約12000気圧で200℃に加熱すると得られる。二硫化炭素に不溶。毒性はない。
十酸化四リン P4O10
無色の結晶。無水リン酸、五酸化二リンとも呼ばれる。昇華点358℃。リンを酸素中で燃焼させることで得られる。吸湿性が強く、潮解性がある。水には多量の熱を発生して溶ける。水に溶けるとメタリン酸(HPO3)nが生じ、これを加熱するとリン酸(オルトリン酸)H3PO4が得られる。乾燥剤や脱水剤に利用される。