鉄(iron)
原子番号 26 原子量 55.845
m.p. 1535℃ b.p. 2750℃
密度 7.874(g/cm3)
単体は灰白色の固体。古くから知られていた元素の一つ。元素記号はラテン語の"ferrum"からきている。日本でも古くから知られており、「黒金(くろがね)」と呼ばれていた。
単体にはα、γ、δ型の同素体が存在する。室温ではα鉄が最も安定。天然には赤鉄鉱Fe2O3、磁鉄鉱Fe3O4、黄鉄鉱FeS2などとして産出する。地球上に広く分布し、金属ではアルミニウムに次いで地殻中の存在量が多い。鉱物(酸化鉄)をコークスとともに溶鉱炉に入れ、還元させることで銑鉄(4%程度の炭素を含む)が得られる。転炉で銑鉄に酸素を吹き込むことで炭素の含有量を減らす。
α鉄は強磁性体。展性・延性に富む。乾いた空気中では安定だが、湿った空気中では酸化されて錆を生じる。酸化数は+2、+3をとることが多い。濃硝酸や濃硫酸には不動態を生じるため溶けない。生体必須元素の一つで、赤血球のヘモグロビンの構成元素である。鉄が不足すると貧血となる。安価で加工しやすく強靭であるため、様々な用途で利用される。炭素を含有する鉄は鋼と呼ばれ、鉄骨や自動車、船舶、レールなどに利用される。鉄にニッケルやクロムを添加したステンレス鋼は、耐食性に優れることから台所用品に使われる。鉄に亜鉛めっきをしたものがトタンであり、スズめっきをしたものがブリキである。カイロでは鉄の酸化に伴う発熱を利用している。鉄が主成分であるプルシアンブルーは顔料として使われる。サファイアの青色は鉄イオンとチタンイオンによるものである。